【週末版】米国関税時代のカーライフ戦略〜国内需要をどう作るか

2025年8月、米国のトランプ大統領は、自動車および主要部品の輸入に対して一律15%の追加関税を課す大統領令にサインしました。狙いは「米国の製造業と雇用の保護」。しかしその影響は、最大の輸出市場のひとつである北米に依存する日本の自動車メーカーにも直撃します。
販売価格の上昇は競争力の低下を招き、現地生産への急転換やコスト吸収の判断を迫られます。為替変動も重なれば、企業収益や国内雇用に深刻な影響を与えかねません。
この出来事は、日本の自動車産業が抱える「海外依存リスク」を改めて浮き彫りにしました。輸出頼みの構造を見直し、国内市場の需要喚起に舵を切るべきときが来ています。オルクラの視点から、この転換の必要性と可能性を探ります。

目次

  1. 米国の関税政策が引き起こす衝撃
  2. 日本メーカーの海外依存構造
  3. 関税リスクと円安・円高の二重苦
  4. 国内市場の縮小と需要喚起の壁
  5. カーライフの価値転換が国内経済を救う
  6. 「長く乗る」文化と中古車循環の再構築
  7. オルクラ的アプローチ:保有の透明化が需要をつくる
  8. 海外依存からの脱却に向けた提案

1. 米国の関税政策が引き起こす衝撃

2025年8月、トランプ大統領が署名した15%の追加関税は、単なる貿易政策にとどまらず、世界の自動車産業に大きな波紋を広げています。
背景には、米国内の自動車メーカーと部品産業の保護、そして製造業雇用の回復があります。中国やメキシコなど低コスト生産国への対抗措置としての色合いが強いものの、日本メーカーも例外ではありません。
関税が上乗せされれば、現地販売価格は上昇し、競争力が低下します。現地生産を拡大するか、利益を削って価格を据え置くかという難しい判断が迫られ、サプライチェーンや投資計画にも影響が及びます。

2. 日本メーカーの海外依存構造

日本の主要自動車メーカーは、販売台数の半分以上を海外に依存しています。中でも北米市場は収益の柱であり、その変動が業績全体を左右します。
この「海外依存型」ビジネスモデルは、為替変動や関税といった外部要因に極めて脆弱です。米国市場の減速や保護主義の台頭は、国内生産や部品メーカーにも波及します。
加えて、環境規制や安全基準など各国独自のルールへの対応コストも年々増加しており、海外依存はリスクを複雑化させています。

3. 関税リスクと円安・円高の二重苦

為替相場の変動は、関税と同様に企業収益を直撃します。
円安は輸出競争力を高める一方、海外での現地通貨建てコストや輸入部品の価格を押し上げます。逆に円高は、輸出利益を削り、価格競争力を低下させます。
こうした「為替の波」と「関税の壁」に同時に直面すると、メーカーは価格戦略・生産戦略の両面で難しい舵取りを迫られます。短期的な対応では限界があり、長期的な市場戦略の見直しが不可欠です。

4. 国内市場の縮小と需要喚起の壁

国内自動車市場は、少子高齢化・人口減少・都市部でのクルマ離れによって縮小しています。若年層を中心にカーシェアやサブスクなど「所有しない」選択肢が広がり、従来型の新車販売モデルは限界を迎えつつあります。
このため、メーカーは海外市場に活路を求めざるを得ませんが、それは国内の自動車文化の衰退を加速させるリスクも伴います。

5. カーライフの価値転換が国内経済を救う

国内需要を再び高めるには、「新車を買う」以外の価値を消費者に提供する必要があります。その一つが、既存車両の長期活用と価値維持です。
欧州では「長く乗る」文化が根付いており、修理・整備・リビルド市場が経済の一部として確立しています。日本でも、保有期間を延ばし整備・改良を重ねることで、中古車市場の価値を高め、部品産業や整備業界の活性化につなげることが可能です。

6. 「長く乗る」文化と中古車循環の再構築

日本の中古車は、品質が高く耐久性もあるにもかかわらず、輸出に回される割合が増えています。これは国内の中古車需要が伸びないことの裏返しです。
整備履歴や修復履歴が不透明なままでは、消費者は安心して中古車を購入できません。そのため国内市場よりも海外市場で評価され、高値で取引される傾向があります。結果として、国内の流通台数が減り、車を買いたくても選択肢が少ない状況が生まれています。

7. オルクラ的アプローチ:保有の透明化が需要をつくる

ここでオルクラが重視するのは「車の履歴を透明化すること」です。
整備や修理、カスタムといった支出記録を簡単に残せる仕組みを提供すれば、消費者は愛車の価値を客観的に把握できます。売却時には信頼できる履歴として高値取引が可能になり、中古車市場の信頼性が向上します。
この「履歴の見える化」が進めば、国内で安心して中古車を買う文化が再び広がり、需要が自然と喚起されます。これは新車販売だけに頼らない経済循環を生み、海外依存を減らす大きな一歩になります。この動きは、新規で自動車運転免許証を取得した若者へ安価な自動車を供給することに繋がり、市場の底上げとなると考えています。

8. 海外依存からの脱却に向けた提案

トランプ政権の15%関税は、日本の自動車産業に「構造転換の必要性」を突きつけています。短期的には現地生産や価格調整で対応できますが、それだけでは根本的な解決になりません。
長期的な安定には、国内市場の需要回復が不可欠です。そのためには、

  • 「長く乗る」文化の普及
  • 整備・履歴の透明化による中古車市場の信頼回復
  • 新車販売依存からの脱却

が求められます。
オルクラは、こうした未来を支える基盤として「保有の見える化」を進め、日本のカーライフの価値を再定義していきます。